【ドイツ語「否定文」】否定形「nicht・kein」の違い・置く位置はどこ?

ドイツ語の否定文には「nicht」と「kein」の2種類があり、使い分けが必要です。
どのように使い分けるのか?否定文の語順はどうなるのか?
解説を詳しくみてみましょう。
「kein」「nicht」の違い
ドイツ語の否定形には「kein」と「nicht」の2種類があり、使い分けが必要です。
kein | nicht |
---|---|
① 不定冠詞(ein)のついた名詞を否定するとき ② 無冠詞名詞を否定するとき | ① 定冠詞(der)や所有冠詞(mein)のついた名詞を否定するとき ② 動詞・形容詞を否定するとき 「nicht」は置く位置によって部分否定か全文否定になる |
冠詞の解説はこちら
例文で簡単に比較
- Das ist kein Schlüssel.(これは、鍵ではない)
→「kein」を使う
- Ich habe den Schlüssel nicht.(私は鍵を持っていない)
→「nicht」を使う
【kein】の使い方・置く位置
いつ使う?
- 不定冠詞(ein)のついた名詞を否定するとき(例:ein Stift)
- 無冠詞名詞を否定するとき(例:Kaffee)



つまり「kein」は名詞の否定にしか使えません
どう使う?使い方は?
- 否定する語の前に置く
- 後ろにくる名詞によって変化させて使う


例:私はペンを持っていない。
「kein」変化一覧
keinは文法用語で「否定冠詞」とも言います。
冠詞の一種なので、後ろにくる名詞・格によって変化させて使います。
男性名詞 | 女性名詞 | 中性名詞 | 複数名詞 | |
1格 (~が) | kein | keine | kein | keine |
2格 (~の) | keines | keiner | keines | keiner |
3格 (~に) | keinem | keiner | keinem | keinen |
4格 (~を) | keinen | keine | kein | keine |
冠詞の使い方はこちらをご覧ください。


例文
例①:不定冠詞(ein)のついた名詞を否定する
Hast du einen Stift?(ペンを持ってる?)
Nein, ich habe keinen Stift.(ペンを持ってないよ)
- 「Stift/ペン」は男性名詞
- 「~を」は4格
したがって、「keinen」が否定する語の前に入る。
例②:冠詞のつかない名詞を否定する
Ist das Kaffee?(これはコーヒーですか?)
Nein, das ist kein Kaffee. (これはコーヒーではありません)
- 「Kaffee/コーヒー」は男性名詞(無冠詞名詞)
- 「~は」は1格
したがって、「kein」が否定する語の前に入る。


例③:よく使う「時間」「空腹」の否定
Er hat keinen Hunger.(彼はお腹が空いていません)
Ich habe keine Zeit.(私は時間がありません)
- ドイツ語の場合、「時間(女性名詞)」も「空腹(男性名詞)」も持っている・いないと表現します。
- 直訳すると、「彼は空腹を持っていません」「私は時間を持っていません」
【nicht】の使い方・置く位置
いつ使う?
- 定冠詞(derなど)や所有冠詞(meinなど)のついた名詞を否定するとき
- 動詞・形容詞を否定するとき
例文
「nicht」をいつ使うのか、例文で具体的にみてみましょう
Ich finde den Schlüssel nicht.
(鍵が見つからない)
- 定冠詞のついた名詞の否定は、「nicht」を使う
Das ist nicht mein Stift.
(これは私のペンではありません)
- 所有冠詞のついた名詞の否定は、「nicht」を使う
Heute ist es nicht heiß.
(今日は暑くない)
- 形容詞の否定は「nicht」を使う
Ich kann nicht nach Deutschland gehen.
(私はドイツに行けない)
- 動詞の否定は「nicht」を使い、基本「場所/どこ」の前に置く


どう使う?使い方は?


部分否定のnicht
例:Er lernt nicht heute.
(彼は、今日は勉強しません)


日本訳だと分かりづらいですが、「nicht」の後ろにある「heute/今日」を否定しています。



つまり、「今日」はやらないが、他の日は否定しておらず、他の日にやる可能性があります。
全文否定のnicht
例:Er lernt heute nicht.
(彼は今日、勉強しません)


部分否定と違い、動詞の「lernen/勉強」を否定しています。



部分否定と違い、この文からでは他の日のことは推測できません。
では、この全文否定の「nicht」はどこに位置すればいいのでしょうか。
まずは、語順を理解する必要があります。
ドイツ語の自然な語順
ドイツ語は「2番目に動詞を置く」のルールを守れば、他の語順はどう置いても多くの場合通じます。
しかし、ネイティブが使う自然な語順は存在します。
「tekamolo」の順に置く
「tekamolo」とは
- 「te」→temporal(時間/いつ)
- 「ka」→kausal(理由/なぜ)
- 「mo」→modal(方法・手段/どのように)
- 「lo」→lokal(場所/どこ)
頭文字をとって、「tekamolo」です。
この順に並べると自然な語順です(この順に並べなければいけない訳ではありません)
例文をみてみましょう。
例:明日、私は自転車でカフェに行く
Morgen fahre ich mit dem Fahrrad ins Cafe
いつ+動詞+主語+どのように+どこ
動詞は必ず2番目、そして主語は動詞の近くに置きます。
それ以外の語句は「時間→理由→方法→場所(tekamolo)」の順に置くと自然です。
さらに詳しい語順の解説はこちら


では、否定「nicht」をいれて全文否定をしたいときは、どこに置くのでしょうか?
どこに置く?全文否定のnicht
例文をみてみましょう。
例1
Er kommt nicht.
(彼は来ない)
- 主語・動詞以外の要素のない一番シンプルな文です。
- 「nicht」は一番最後に置かれています。
例2
Er kommt heute nicht.
(彼は今日、来ない)
- 「時間/いつ」が加わりました。
- 「nicht heute」の順にすると、部分否定になってしまいます。
- 「nicht」は変わらず一番最後です。
例3
Er kommt heute wegen einer Erkältung nicht.
(彼は今日、風邪のため来ない)
- 「理由/なぜ」が加わりました。
- 「nicht」は変わらず一番最後です。
例4
Er kommt heute wegen einer Erkältung nicht zur Party.
(彼は今日、風邪のためパーティーに来ない)
- 「場所/どこ」が加わりました。
- 全文否定のとき、「nicht」は「場所/どこ」の前に置きます。



この時点で、「nicht」は一番最後ではなくなりました。
例5
Er kommt heute mit seinen Freunden nicht zur Party.
(彼は今日友達と、パーティーに来ない)
- 「友達と」が加わりました。
- 「mit」も「zur」も前置詞ですが、「場所/どこ」を表している語句のみ「nicht」の後になります。
例6
Er kann heute mit seinen Freunden nicht zur Party kommen.
(彼は今日、友達とパーティーに来ることができない)
- 「助動詞」が加わりました。
- 助動詞は「動詞の原形を最後に置く」というルールがあります。
そのため、「nicht」よりも後に置かれます。
【例文比較】部分否定と全文否定
部分否定と全文否定の使い分けの感覚を、例文でつかみましょう。
例文1
Morgen fahre ich nicht mit dem Fahrrad ins Cafe.
(明日、私は自転車ではカフェへ行かない。)
- 自転車を否定しているが、他の乗り物でカフェへ行く可能性がある。
Morgen fahre ich mit dem Fahrrad nicht ins Cafe.
(明日、私は自転車でカフェへ行かない。)
- カフェへ行くこと自体を否定している。
例文2
Er kommt heute nicht mit seinen Freunden zur Party, sondern allein.
(彼は今日、友達と一緒にパーティーに来ないが、一人で来る)
- 友達と一緒に来ることを否定している。
Er kommt heute mit seinen Freunden nicht zur Party.
(彼は今日、友達と一緒にパーティーに来ない)
- パーティーへ行くこと自体を否定している。
複雑なドイツ語の否定形
ドイツ語の否定形は、「kein」と「nicht」を使い分け、さらに格変化や置く位置などを考えなけれなならず、正直、複雑です。
特に「全文否定・部分否定」は、ゲーテの教科書ではB1まで習いません。
このことからも、ドイツ語入門者レベルでは少し難しいことが分かります。
しかし、否定形は会話をするときなどにも欠かせないものですね。
まずは、「kein」と「nicht」の使い分けをマスターし、「nicht」の語順などはそれから徐々に覚えていけば会話をする上では、それほど問題ありません。
焦らず、少しずつ頑張りましょう。

