ドイツ語にも英語のように、助動詞があります。
テキストなどでは「話法の助動詞」と呼ばれるものです。
今回は話法の助動詞の内「wollen」、そして同じように「~したい・欲しい」の意味がある接続法第2式の「möchten」を比較して解説します。
目次
「wollen」「möchten」とは?
wollenとは
- 「~したい・欲しい」以外にも「~するつもりです」という意味もある
- 疑問文にすれば「~しない?」と誘いかけにも使える(後半で詳しく解説しています)
(私は映画を観たい)
möchtenとは
- 「~したいです」丁寧な言い方
(私は映画を観たいです)
「wollen」と「möchten」の使い分け・違い
例えば、「コーヒーを飲みたい」を伝えるとします。
- 「wollen」は「意思」なので、「私は飲むぞ」という一方的な要求といった感じになります。そのため、家族・友人など親しい間柄や、子どもたちが使うような表現です。
- 「möchten」は願望なので、「飲みたいな」と相手に願いを伝えるようなニュアンスになります。そのため、丁寧な言い方になり、初対面の人・ビジネスでも使えます。
語順
wollenもmöchtenも語順は同じです。
例:Ich will nach Deutschland gehen.
(私はドイツへ行きたい)
- 「will」は、助動詞「wollen」が変化したものです。
- 「wollen」は主語によって変化していますが、動詞の「gehen/行く」は原形のまま文末に置かれています。ドイツ語の動詞原形は、語尾が必ず「-en」で終わります。
「物(名詞)を欲しい」と伝える場合
「物(名詞)を欲しい」と伝えるときは、必ず4格とセットで使います。
例:Ich will einen PC.
(私はパソコンがほしいです)
- 例文では、「einen PC(パソコンを)」が4格です。
- ein(不定冠詞)で4格を表す:【「ein・eine・ein」】「不定冠詞・格変化」とは?使い方と意味【文法解説】
- 基本の語順:【「語順」】動詞・目的語・主語の位置はどこにすればいい?【基本の文の作り方】
人称変化一覧
ドイツ語の動詞は、主語によって形を変えて使うのが特徴です。(これを人称変化、または活用という)
今回の「助動詞」もすべて形を変えて使います。
wollenの人称変化一覧表
私 | Ich | will | 1人称 |
あなた | Du | willst | 2人称 |
彼・彼女 | Er ・Sie | will | 3人称 |
私たち | Wir | wollen | 1人称複数 |
あなたたち | Ihr | wollt | 2人称複数 |
彼・彼女ら | Sie | wollen | 3人称複数 |
あなた(敬称) あなたたち(敬称) | Sie | wollen | 2人称の敬称 |
möchtenの人称変化一覧表
私 | Ich | möchte | 1人称 |
あなた | Du | möchtest | 2人称 |
彼・彼女 | Er ・Sie | möchte | 3人称 |
私たち | Wir | möchten | 1人称複数 |
あなたたち | Ihr | möchtet | 2人称複数 |
彼ら・彼女ら | Sie | möchten | 3人称複数 |
あなた(敬称) あなたたち(敬称) | Sie | möchten | 2人称の敬称 |
例文で感覚を掴もう!
肯定文
Ich will ein Wasser.
(お水が欲しい)
Ich möchte gern ein Wasser bitte…
(お水が欲しいのですが)
Er will sich mit ihr treffen.
(彼は彼女と会うつもりだ)
疑問文
Willst du nach Deutschland gehen?
(あなたはドイツへ行きたいの?)
Was möchten Sie?
(あなた(敬称)は、なにが欲しいですか?)
- 「was」は「何」という意味の疑問詞です。
疑問詞の解説はこちら:【「疑問詞」】格変化しない疑問詞まとめ。前置詞との融合系とは?
否定文
- 動詞・形容詞・名詞の否定には「nicht」
- 「ein」の付く名詞、無冠詞の否定には「kein-」
基本的には、それぞれ否定する語の前に置く
ドイツ語の否定には「nicht」と「kein」の2種類があり、使い分けが必要です。
Er will nicht lernen.
(彼は勉強をしたくない)
Ich möchte aber kein Bier.
(私は、ビールはいらないのですが、、)
möchtenは丁寧な言い方なので、否定文も柔らかく伝えるために「aber」を入れることがよくあります。wollenは「aber」を入れると意思を強調するニュアンスになります。
Wir wollen kein Frühstück essen.
(私たちは朝ごはんを食べないつもりです)
「~しない?しませんか?」誘いかける文の作り方
wollenなどを疑問文にすると「~しない?」「~しませんか?」という誘いかけにもできます。
wollenの誘いかけ
例文:Wollen wir zusammen essen gehen?
(一緒に食事しない?)
(「私たち」と言うか、「あなたと私」と言うかの違い)
しかし、わざわざ「du mit mir/あなたと私」とは言わず「wir/私たち」を使った方が自然です。
丁寧な誘いかけ
例文①:一緒に食事をしませんか?
- Gehen wir zusammen essen?
- Sollen wir zusammen essen gehen?
例文②:後で打合せをしませんか?
- Besprechen wir das später zusammen?
- Sollen wir das später zusammen besprechen?
「Möchten」を誘いかけで使うとしたら、主語を「Sie mit mir(あなたと私)」に変えて、デートなどのプライベートの1対1の丁寧な誘いかけで使えます。
例:Möchten Sie mit mir zusammen essen gehen?(一緒に食事をしませんか?)
例文問題
問1
彼は買い物をしたい
問2
彼らは明日行くつもりです
問3
あなた(敬称)は、ドイツへ行きたいですか?
問4
一緒に映画へ行かない?
解答
問1
Er will einkaufen.
(彼は買い物をしたい)
問2
Sie wollen morgen gehen.
(彼らは明日行くつもりです)
問3
Möchten Sie nach Deutschland gehen?
(あなた(敬称)は、ドイツへ行きたいですか?)
問4
Wollen wir zusammen ins Kino gehen?
(一緒に映画へ行かない?)
母語話者は「意思の強さ」や「願望」はあまり意識して使い分けていないので、もっとシンプルに「wollenはカジュアルな表現」「möchtenは丁寧な表現」という理解でも十分です。